うぐいす娘
「うぐいす娘」という民話があります。
むかし、むかし。
ある男が、
「きょうはほんとに寒か日じゃいが、何か小鳥でも射てきて晩のさかなにしたい」
と思って、鉄砲をかたげて山に行きました。
ところがその日に限って、どうしたものかえものはさっぱり見つかりません。
あっちの山、こっちの谷と渡り歩きました。そしていつのまにか奥山に来ていました。
「あっ。」
男は息をのみました。
この寒い日に、向うの谷間で娘が一人、せっせとタンボを耕しているではありませんか。
「あや、ここらあたりに家があるそうなな。」
男は鉄砲射ちをやあて、大きな木の下にしゃがみ、娘の仕事を見ていました。
やがて仕事を終えた娘は、一人帰って行きました。
「この娘のあとをしとうてみれ。」
男はそっとあとをつけました。やがて一軒家があって、娘はそこにはいっていきました。
男がのぞいてみると、家には娘が一人です。
あたりにはいつのまにか夕やみが迫っていました。
男は思いきって中へはいりました。
「娘さん、今晩は。今夜、おれをここにとめて下さらんか。」
「はい。どうぞ。」
男が座敷に上ると、娘はお茶をわかしてくれました。
ところが、そのお茶がひとりでに男のほうへ寄ってくるのです。
「ほほう。きたいやなあ。」
外はすっかり暗くなってしまいましたが、その家にはほかにはだれも帰ってきません。娘だけです。
その晩は男はそこにとまりました。